(6)江口浜で、サゴシ(サワラ)が釣れたのを初めて目撃。そしてルアー事故の惨事。

2月7日日曜日は、朝から吹上に仕事があって、ついでに江口浜に足を伸ばした。正確に言えば、釣りのついでに仕事も片付けたということだが。江口浜に向かう途中は、もしかしたらこの日北朝鮮がミサイルを打つかもしれないと報じられていたので、西の空の雲間を見ながら吹上から江口に向かった。後でニュースで聴いたら、すでに打ち上げられた後だった。

 

江口の先端の突堤では、フカセが2、3人とルアーが2人ほどで満員だったので、仕方なくひとり手前の突堤で釣ることにした。かなり大きなうねりが押し寄せていた。見たこともないほどの大勢のサーファーが波間に腹這いで波を待っていた。撒餌は、いつもの4分の1程度しか準備せずに、早速第一投、すぐにアタリがあったが、嫌な予感。スーと引いたので合わせ、竿先に軽い掛かりは感じたがクロではない。予感通り草フグ。1時間程度粘ったが、ここも昨日の木材港と同様、草フグだらけのアタリに終始した。先端の突堤にも見に行ったが、うねりを避けられる釣りやすいところで羨ましかったが、スカリは出ていなかった。ルアーのおじさんが、サゴシというか、大きさから言うとサワラを1匹釣りあげた。ここではよく見ることのできるナブラに対し、若者に限らず、お年を召されたアングラー達が入れ替わり押し寄せるポイントではあるが、これまでその釣果を見たことはなかったのだが、初めて目撃した。

 

ルアーと言えば、木材港でも堤防近くまでナブラが寄せてくる。日ごろからアングラーも多い。2015年12月のこと、クロ釣り中に珍しく反対側(内側)にナブラが湧いたので、アングラー達はもちろん、一人の遠投カゴ釣りのおじさんも含め、一斉にナブラ目がけルアーや仕掛けを投入し始めた。その直後、何やらその内の若い男がウメきだした。ゲーゲーえずいてもいる。釣りをしながら何事かと振り向いてみると、口から血を垂らしている。その内、寝そべってしまった。でも、連れの若い女性はそんなに慌てる様子はないので、周りも釣りを続行していたが、あまりにも尋常ではないえずきに、周りのおじさん達は若者の様子を見に行く。が私は、とても見に行く勇気はない。状況は、何とルアーが口の中に入り、針が引っかかり取れない状態とのこと。どうして、口にルアーが入ったのか。どうすればそうなるのか。信じられない状況だ。絶えず口に指を入れているが、そうでもしないと呼吸ができないくらい苦しいのかもしれない。しばらくすると、後から来たアングラーが顔見知りだったらしく、口の中を見てすぐ、救急車を呼んだ。10分待たないうちサイレンが聞こえホッとしたが、なかなか、この堤防までは来てくれない。堤防までの降り方がわからないのだ。臨海大橋を通り過ぎたり、戻ったりを繰り返すものだから、さすがに連れの女性が誘導しに迎えに走った。ようやく到着、隊員の一人が先に駆け足で、続いて二人の隊員がストレッチャーをゴロゴロ堤防をこちらに急ぐ。

 

先に到着した隊員と何やらやり取りをしてから、ストレッチャーに下半身を括りつけられゴロゴロと運ばれていく。数メートル先に行った先で、若者から「ホー」と大きな声が出た。若者自身が自分で口の中に掛かっていた針を外し、ルアーが口から取り出せた結果、呼吸が楽になった瞬間の第一声である。本当にすごい。この若者は、腕にタトゥーがチラッと見え、見た目はかなりチャラい感じではあったが何となく男気があった。最初は、恥ずかしさもあってか、自分で何とかしようとしていたので、連れの女性にも騒がないように制していたのかもしれない。

 

実はこの事故が起きる、つまり、ナブラが湧くほんの数分前に、私に30cmオーバーのクロが掛かり、そこにその若者が駆け寄り、場違いな大物に興奮し、近くのおじさんからタモを借りてきて、取り込みの一部始終を手伝ってくれたのだ。無事に取り込んでからも、本当に自分が釣ったかのように「スゲェ、スゲェ」と嬉しそうに喜んでくれた。そんな、優しい若者だったのに、私はその若者の突然の大事故に、何も手を差し伸べようとせず、ただ、遠巻きに見ているだけだったのだ。何とか手を貸したいと思うより、彼の目を覆いたくなる光景をイメージするだけで恐怖が先行し、一歩も近寄る気力が出てこなかったのだ。申し訳ないが、恥ずかしながら事故発生直後に小刻みに体が震え、気もそぞろで、もう釣りどころではなくなり、帰り支度をはじめて、結局、救急車より自分が先に車を出していたのである。実際のいざというときの、こんな自分が情けなかった。

 

それにしても、ルアーや、イカ餌木も、普通の釣りも、周囲に注意して取り扱わなければならないと思い知らされたのである。