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(2)バネカゴ仕掛けの誕生

左肩を壊した(腕を回す動作において激痛が走る)ので、もちろん治療にために色々通った。整形外科は3件、整体も3件替えた。ある整形外科では、ヒアルロン酸を肩関節の間に1週間に1回のペースで4~5回ほど打ってもらったが、打った直後の数十分だけの一時的な気休めだった。飲み薬「リリカ」は、痛みは和らいだが、フラフラするなどの副作用が強く、服用は続かなかった。整体は、痛いのは肩だけなのに、どこも同じメニューで料金の割には効果はなかった。自然、肩の治療は諦めた形となった。

 

だったら、釣りそのものを止めればいいのだが、それはそれ、止められないのが人情というもので。とにかく、大物クロを釣り、皮を焼いて刺身に引いて食べたい私は、たとえそれが見苦しかろうが、恥ずかしい邪道と言われようが、何が何でも仕掛けと撒餌を同調させるにはどうするかを考えなければならなかった。

 

 

 

杓を使わずに撒餌を打つためには、撒餌を仕掛けと一緒に同時に投入する方法があるが、その場合、仕掛けそのものが大仕掛となる。一般的には、大きな遠投ウキ(8号以上)と、撒餌用の天秤カゴと、その中身の撒餌、オモリなど、かなり大きな重量仕掛けとなってしまう。当然、竿も太いものでなければならなくなる。

 

私が目指したのは、そうではない。あくまでも、完全フカセ(杓で撒餌を打ってクロを上中層に寄せて釣る)である。これまで、杓で撒餌を打っていた時に用いていた1.5号の竿(4.5m)と、アタリの取りやすいできるだけ感度の高い円錐ウキはそのまま使うことにして、撒餌を一緒に投入できないか。しかも、お金も時間も掛けずに。

 

そこで、撒餌カゴに採用したのが、昔、父が遠投カゴに使っていたバネカゴ(ほぼタマゴの大きさ程度)である。このバネカゴの中心には、大きなオモリが通してあるが、これを何とかして外して、バネそのものの重さだけにし、更に、そのバネだけの重さもゼロ(マイナス)にするために、オモリの代わりに発砲浮き玉を通して、沈まないように調整した。これをウキの下に可動式(アタリに影響を与えないようにするため、サルカンやウキスイベルで取りつけ、スルスル)にした。また、海面に投入直後、さっと撒餌がバラけて、ウキが沈んでしまわないようにするため、撒餌は練らずにほんの少し湿らす程度に混ぜ合わせた。また、バネカゴの前後にからまん棒で可動域を調整できるようにした。これらを実釣で調整しながら改良を重ねた。

 

バネカゴ第一号の釣行初日で、33センチオーバーが1匹釣れた。この日大物が釣れた最大の要因は、今思えば、自分が思うように撒餌投入のバネカゴの調整ができた結果、タナ合わせについてだけ集中できたからだと思う。つまり、これまでタナ合わせは、確たる実証を得ていない、まったく当てずっぽうだったので、最初タナが深めで、真鯛の子やベラしか釣れず、はっと閃いて一ヒロ半まで浅くして、やっとクロのアタリらしきものを見極められたのである。でも、33センチオーバーが釣れたという事実が伴ったにもかかわらず、その時はまだ、このバネカゴ仕掛けが功を奏したとは感じてなかった。まぐれだと思っていたし、むしろ邪道で、恥ずかしく、見られたくない気持ちの方が強かった。